二つの水を混ぜたときの混合水の温度は,各々の水の重量比 (〜容量比) の重みをつけた平均になります. つまり,(水0) と (水1) の容量と温度をそれぞれ,$m_0$ g, $m_1$ g; $t_0$ °C, $t_1$ °C とすると ($m$ と$t$ はそれぞれ mass と temperature の頭文字),混合水 (水3) の温度 $t_2$ °C は,(0): $\frac{m_0t_0 + m_1t_1}{m_0 + m_1}$ として (近似) 計算できます.これを上の問題にあてはめると,“(10+50)/2=30度” がでてきます.
以下の説明は,このような「公式」を鵜呑みにする能力を持っていない人のためのものです: そのような人のための説明が,ちょっと探しただけでは出てこない (日本語だけで なく英語や他のヨーロッパ言語でさがしても) というのは不思議ですが,これは,「公式」を鵜呑みにする 能力を持っていない人は,以下に書くようなことは,当然のこととして一瞬に頭の中で 考えられてしまうだけの思考能力を持った人であることが多いからなのかもしれません.
温度をケルビンでなく摂氏で計算しても大丈夫なのはなぜか,ということも以下を読むとわかります.
ここでの議論は,古典物理学的なもので,しかもかなり粗い近似です,上で “(近似) 計算” と書いたのも,この 意味でです.ある容量の流体 (水 1𝓁, アルコール 2𝓁 など) の熱エネルギー (流体を構成する 分子の運動エネルギーの総和) $E$ は,(1): $E = m\cdot Cp \cdot k$ となります.$Cp$ は熱容量定数 (heat capacity) で 考えている流体を構成している物質に依存して決まる定数です.cgs 系では,水の場合,4182 J/kg°K です.$k$ はケルビン (絶対温度系) で表わした値です摂氏の温度を $t$ とすると $k=t+273$ または,$t=k-273$ です.流体は,相転移をしたり,その他物質ごとの 特性があったりするので,(1) はいずれにしても線形近似でしかないことは明らかですが,逆に (1) は絶対温度の (水の熱容量定数が与えられた上での) 定義式と見ることもできます. (1) を使うと,(0) を次のようにして導くことができます.今 $i=0,1,2$ として,(水i) の 熱エネルギーを $E_i$ と表わすことにすると (2): $E_i = m_i\cdot Cp \cdot (t_i+273)$ となるので,これを (3): $E_2 = E_0 + E_1$ に代入すると, (4): $m_2 = m_0 + m_1$ に留意して,
$m_2\cdot Cp \cdot(t_2+273) = m_0\cdot Cp \cdot(t_0+273) + m_1\cdot Cp\cdot(t_1+273)$
$\Leftrightarrow\ \ t_2+273 = \frac{m_0\cdot(t_0+273) + m_1\cdot(t_1+273)}{m_2}$ (両辺を $m_2\cdot Cp$ で割る)
$\Leftrightarrow\ \ t_2 = \frac{m_0\cdot(t_0+273) + m_1\cdot(t_1+273)}{m₂} -273$ ($273$ を移項)
$\Leftrightarrow\ \ t_2 = \frac{m_0 t_0 + m_0 t_1}{m_2} + \frac{m_0 + m_1}{m_0}\cdot 273 -273$ (式の整理)
$\Leftrightarrow\ \ t_2 = \frac{m_0 t_0 + m_1 t_1}{m_0 + m_1}$ ((4) による)
となることが分ります.また,上の議論から,この式は,水でなくとも,同じ種類の液体を混合したときの 混合物の温度の計算に用いるこもできることが分ります.